お仏壇の老舗が新業態!?

仏壇業界の老舗である株式会社はせがわさんが新業態の店舗をオープンしたという記事があったので早速考えてみたいと思います。

祈りの老舗 はせがわの子会社が「食」と「祈り」をテーマとしたライフスタイルショップ「田ノ実(Tanomi)」1号店を自由が丘にオープン!

https://news.nicovideo.jp/watch/nw5310673

お仏壇のはせがわというCMでおなじみ、老舗の株式会社はせがわが100%出資した子会社「田ノ実」というお店が自由が丘に6月14日オープンするそうです。

自由が丘と聞くと、あまり縁の無い私にはオシャレな街だなーという印象が強いのですが、そんなオシャレな街に、お仏壇の老舗が店舗を構えるという事そのものに大きな興味が湧いてきますよね。

「田ノ実」というこのお店、【古くて新しい"日本の食"に焦点をあて、お米、糀(こうじ)、発酵食品を中心とした食と雑貨のライフスタイルショップ】というコンセプトだそうで、なるほど自由が丘と馴染むコンセプトだなぁと感じました。

ひょっとしたらカジュアルなお仏壇の店なのかなと思っていたのですが、そうではなかったようです。

しかし、お仏壇の持つ家系という一本の太い幹に沿った事業なのかなとも感じます。

どういうことかというと、お仏壇は家系、先祖代々、家を守る、といった家族の歴史を強く感じる商品なのですが、この家を強くイメージさせる根本は稲作ではないかと常々思っていたのです。

稲作は同じ土地に住まい続けなければ成立しない産業ですし、有史以前からの我が国の基幹産業?と言ってもいいのではないでしょうか。「田ノ実」はこの稲作にもスポットを当てています。

人びとは生きるために作物の無事と豊作を「願い」、実りに「感謝」するために「祈り」を捧げてきました。それは、いまの暮らしのなかにも息づいており、人々は年始には初詣に行き、地域のお祭りに参加し、お盆にはお墓参りをします。そして、その傍らにはお餅やお酒、美味しい食べものが供えられています。「田ノ実」は、日本人の生活にある「祈り」を、「食」からひもとく事業です。

と記事にもありますように、お仏壇やお墓、その前で拝む、祈る、といった行為は日本の伝統稲作と切っても切れない関係があるからで、お仏壇の持っている根本的な領域、物質を取り除いた先にある本当の需要に焦点が当たっている辺り、さすが老舗の会社さんだなと感心してしまいました。

この「田ノ実」というショップは3階構造になっていて、それぞれにさらに細かいコンセプトがあるようです。

1階は雑貨と食品のショップのようです。「しつらえ」という日本伝統の考え方を軸に展開した商品群が並びそうです。

そして2階が飲食。お米、すなわちご飯と具だくさんの汁物をメインに、季節を感じながら静かにリラックスした食事ができそうです。有名シェフが手掛けるメニューにも興味が湧きます。

3階は催事に使うスペース。日本の季節行事と食を暮らしに取り入れる教室から、生産者と直接話し、生産物の背景を学ぶ講座まで、豊富な内容でプランニング中とのことなので、どんなイベントが行われるのか?楽しみですね。

最後に、お墓とお仏壇は切っても切れない関係にあり、「家」というワードと「祈り」というワードはどちらも共有していますし、以前上げた記事では「仏壇はIT端末でお墓はメインサーバ」というような記事もあったりしますので、根本にある考え方は本当に同じなんだなと痛感してしまいます。

米という安定供給が可能な食料を手に入れ、その生産が自分たちの生活を安定的に豊かにするのだ、という事に気付いた我々の先祖たちが、試行錯誤を繰り返し、その発展に寄与し続けてこれたのも、家を繋ぎ続けて身近では親、そしてご先祖へと祈りを捧げ続けてきたからこその、今日の発展なのかもしれません。